—— 変わらない服と変わりやすい気持ち。そんな自分が子どもの頃から憧れる“タイムレス”な人とは？

「今の自分に合わせてくれるチャンピオンのようなオーセンティックな服がずっと好きだから、仕事柄、役に合わせたヘアスタイルが唯一ファッションに大きく影響するかもしれない。同じ服でも、坊主やロングなど髪で印象が全然変わるのを楽しんでいます。役によって考えもしょっちゅう変わりますが、それは常に柔軟に対応していくフレッシュな存在として見られたいから。ずっと変わらない、タイムレスという言葉から、僕は祖父を思います。子どもの頃、僕が学校から帰ってきて夕方相撲中継がはじまるまでの間、祖父と家の裏山に作った基地で今日あったことを話したり、いろんなものを作ったり、母が差し入れてくれたおにぎりを食べたりして、たくさんのことを教わりました。そこでの思い出は今でも色濃く残っています。祖父はもう既に亡くなってしまっているのですが、不器用だけど愛情を隠しきれない男というイメージで、未だにカッコイイと思うし、自分もそういう人になりたいと思う憧れの存在です」

—— 服も仕事も、変化を楽しめるようになった今でも変わらずに興味を抱き続ける存在とは？

「シンプルでベーシックという点ではずっと変わらないのに、組み合わせ方や髪型、ちょっとしたアクセサリーづかいで女性らしくも、スポーティにも、ボーイッシュな印象にもなるチャンピオンのアイテムは、いろんな変化を感じられて楽しいですよね。私自身のモデルや女優としての活動の中で変わらないのは、常に流れに身を任せるというスタンス。もともと、写真に写るのも人前に立つことも苦手で、今の自分の姿は想像すらつかなかったんです（笑）。でも、お仕事をさせていただくようになって、誰かと話すことが楽しくなったし、新しい世界をどんどん見られるように変化していけたことは、よい意味で受け身の姿勢を変えなかったからなんじゃないかなと思っています。“タイムレス”な存在って、私の中では古い文学や絵画、音楽がイメージ。中でも民謡に興味があって、日本のものでも世界のものでもジャンル問わず聴いているのですが、アイヌと沖縄の民謡が特に好き。聴いていると自然とテンションがあがるし、すごく鼓舞されるんですよね。時が経っても人の心を奮い立たせる存在のひとつです」

—— 変わらないファッションへのこだわりにも重なる、ミュージシャンとして目指すスタイルとは？

「“飾らなくてもカッコイイ”っていうのが、自分の中のテーマ。それはこのチャンピオンのベーシックなスタイルみたいに、自分の音楽活動にも言えること。こんなふうに普段着の雰囲気のままでステージに立ってもキマるっていうのが、バンドマンのカッコイイところなんじゃないかな。昔はもっと自分をよく見せたい、うまく見せたいっていう気持ちが大きかったけれど、だんだんそういう気持ちはなくなってきた。というよりも、バンドをはじめた頃の感覚に戻った感じ。だから、昨年4年ぶりにリリースしたアルバムは、僕たちが最初からやりたかった好きな音楽をシンプルに作れたと思っています。ずっと好きでいられるものってなかなかないかもしれないけれど、僕は青春時代にパンクとかバンドっていうものに心を撃ち抜かれて、それが好きで今もずっと続けている。当時聴いていた音楽は今もやっぱりかっこいいなって思うし、それだけ愛せるものがあることが嬉しい。趣味も服装も、社会もどんどん変わっていく中で、自分自身だけは変わらないように、バンドを続けているのかもしれないです」